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長引くコロナ禍による医療現場の士気低迷の後遺症をどう脱却するか?/組織開発のアプローチ

  • 業種 病院・診療所・歯科
  • 種別 レポート

長引くコロナ禍の影響で、多くの病院において、若手スタッフの離職や主任クラス、師長・課長クラスの困惑が見られています。疲労がたまり、以前のような姿勢を示せなくなっている状況下で、どのように現場の士気を回復させていけばよいのでしょうか?

感情を吐き出す場を作る

現場のストレスが溜まっている場合、まずは「感情を吐き出せる場を作ること」が重要です。
マーシャル・ローゼン・バーグ博士が生み出した非暴力コミュニケーション(NVC)の概念によれば、感情が沸き立っているときは、「感じる」プロセスが重要となり、我慢すべきではないとされています。

我慢をすれば、各々の内側に負のエネルギーが蓄積し、それが愚痴や不満といった暴力的な態度として現れてきます。人によっては、正しくセルフコントロールできない自分が悪いとして自らを責めることにもなり、最悪の場合、心の病気にまで発展するでしょう。

このような状態に陥らないようにするためには、各々の内側で起きている気持ちや感情を溜めず、吐き出すことが重要です。

現場が前向きな一歩を踏み出せていない状況の中で、数字であったり、できていない点を指摘したり、注意したりすると、現場の気持ちは後ろ向きな気持ちを強め、経営層の指示に対してブレーキがかかってしまいます。

現場の士気を回復させるには、数字や問題点を指摘するだけでなく、「現場スタッフの内側で何が起きているのか」に問いを持ち、それを理解し、受け止めていくことに努める姿勢が重要となります。現場スタッフと接し、彼らの苦悩や葛藤を共有することが、経営回復の鍵と捉えてください。

研修会を活用すること

師長・課長クラスを集めた研修会のような場で、各自が現状をどのように認識しているのか、どのような苦悩や気掛かりを感じているのかをシェアし、全体で受け止め合うことが効果的です。同じ立場の方々がどのような苦悩や葛藤を味わっているのかをシェアすることで、自分の感情から一旦距離を置くことができます。

「自分の内側で何が起きているのか」、「これは自分だけの問題ではなくどこにでも起きていることだ」と自己の理解を深め、負の感情を手放した上で、「いま私たちが向き合っていく必要のあることとは何か」、「このような時こそ何を大切にしていく必要があるのだろうか」と、未来に向けて必要なアクションを探求していくのです。

私たち人間は、心の働きが、思考と言動の質と量を決めています。心に揺らぎが起きやすい現代の環境下では、「精神の安定と精神の鍛錬を積み重ねていく機会」を作ることが重要です。経営層、幹部の皆様、是非、このような機会を作られてみてください。

病院幹部のための組織開発講座第12弾人口減少時代に備えた病院の組織づくり

組織開発というアプローチ

本稿の執筆者

江畑直樹(えばた なおき)
株式会社ミライバ 取締役

2003年日本経営入社。主に医療機関、福祉施設の組織創りや幹部・管理職・監督職の研修に従事。2018年に株式会社ミライバを設立し、組織開発コンサルティングや人材開発研修の支援を行う。成人発達理論、学習する組織、U理論、インテグラル理論、NVC等の理論をベースとし、首都大学東京専門職大学院や日本社会事業大学専門職大学院では、これら理論を軸とした組織創りやサービス開発等について看護管理者、福祉管理者を対象に授業を行う。

株式会社ミライバ/株式会社日本経営

本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的なコメントを述べたものです。実際の経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。

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